リスクマネジメントのプロが伝授する、文書は想像力を働かせて慎重に作成せよ!

リスクマネジメント

リスクマネジメントにおける文書の重要性

不測の事態が生じたことに伴って発生した損害は、民法等の法律に従って負担者が定められます。民法等の法律に従った結論で問題ないのであれば、特段の文書を作成する必要はありませんし、法律と同じ内容の契約書等を交わしてもあまり意味はありません。しかし、法律に従った内容では困るというような場合、予め文書にその理想的な内容を定めておく必要があります。ここで文書とは、契約書、規定、約款などを指します。

東京マラソン2020のケース

市民マラソンにエントリーして費用を支払ったが、マラソンは中止になった。この場合、法律に従えば、エントリー費用は返金されなければなりません。契約の対価であるマラソンへの出走の機会の提供が履行されていないからです。

しかし、2020年の東京マラソンではこの返金はなされませんでした。エントリー者がPC等を通じてマラソンにエントリーする際に、エントリー規約に同意しており、この規約において、新型コロナウィルスの感染拡大のような事態においては、主催者判断でレースを中止できるとともに、費用も返金しないと明記されていたからです。

主催者としては大会の広報や参加者募集等で膨大な費用を既に支出済であるため、この費用を返金すると大赤字となってしまいます。コロナ禍で大会中止がやむをえない中、これによって生じる損害は、本来は主催者が負担すべきものですが、規定により、これを参加者に転嫁した事例として有名です。

知床遊覧船事故のケース

本稿執筆時にまだ事件係属中であり、報道された内容のみによる内容となりますが、知床遊覧船事故の被害者に保険金がおりるのかどうかという問題があります。

法律論から言うと、保険者である運営会社が故意に事故を起こした場合は保険金がおりないとされます。さすがにわざと船を沈没させたということはないでしょうが、法律的には、故意と重過失は同じ意味で解釈されることが多く、運営会社に重過失があると判断されると、保険金はおりない可能性があります。

このほか、この事件では被害者の約半数がまだ発見されていませんが、状況的には乗客は全滅したとしか考えられないとしても、被害者が見つかっていない時点で保険金がおりるのかどうかという問題もあります。

ここで、保険会社の約款の記載が注目されます。法理論と同じ内容であれば、この件は運営会社の重過失の存否をめぐって訴訟が長引く可能性がありますし、約款で本件のようなケースを想定した規定があれば、あっさり解決する可能性もあります。

まとめ

以上のように、リスクマネジメントの観点から、契約書や規定等に不測の事態を想定した条項を多数盛り込んでおくことは非常に重要です。そのためには、想像力を働かせて、様々なリスクを想定し、法律的な検討、会計面のインパクトの算定など様々な分析等が必要となります。

当事務所では、経営・法律・会計に横断的に精通した専門家が、こうした活動をワンストップでサポートいたします。まずは、下記よりお気軽にご相談ください。

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